【上映会】互いの顔を見たことがない姉と弟とその家族を25年間追い続けたドキュメンタリー『イーちゃんの白い杖』特別編

『イーちゃんの白い杖』特別編

 

上映作品:『イーちゃんの白い杖』特別編
出演:小長谷唯織(姉=通称イーちゃん)
   小長谷息吹(弟)
語り:春風亭昇太
監督:橋本真理子(テレビ静岡報道制作局長兼情報ニュース部長)
2024年6月14日@日本記者クラブ

 

■特別編は民放連賞グランプリを獲得

 

生まれつき目の見えない女性(小長谷唯織さん=こながやいおり=イーちゃん)と重度の障がいを持つ弟・息吹(いぶき)、その家族を25年間追ったテレビ静岡のドキュメンタリー番組。

今年度の日本記者クラブ賞特別賞はこの作品を作った橋本真理子・テレビ静岡報道制作局長兼情報ニュース部長を中心とした取材班に贈られた。

作品は2018年に静岡3映画館で公開され、翌年には東京でも上映された。新たな映像も追加された特別編は2024年1月から2月にかけフジテレビ系列28局で放送された。

「『イーちゃんの白い杖』特別編」は2023年日本民間放送連盟賞テレビ・グランプリを獲得、第61回ギャラクシー賞に入賞した。特に民放連賞はその年に制作された報道番組、教養番組、エンターテインメント番組、ドラマ計328作品の頂点を極めた。

テレビ・ドキュメンタリー賞には文化庁芸術祭賞、日本民間放送連盟賞、日本放送批評懇談会ギャラクシー賞大賞、FNS(フジテレビ系28局のネットワークシステム)ドキュメンタリー大賞、ATP(全日本テレビ番組製作社連盟)賞などがある。

 

■初めて会ったのはイーちゃん8歳の頃

 

取材班が初めて出会った小長谷唯織ちゃん、通称イーちゃんは先天性両網膜色素変性症という病気で生まれつき目が見えないが、大人顔負けのおしゃべりとチャレンジ精神で、周りの人たちに勇気と笑顔をもたらしてくれる女の子。

生年月日が分からない。現時点で判明している2019年3月19日時点の年齢(28歳)から推定して2024年3月19日時点で33歳。6月の現時点では34歳かもしれない。生まれは推定1991年。

取材班がイーちゃんに出会ったのは彼女が小学校2年で静岡県立盲学校に通っていた頃だった。取材班はこの『イーちゃんの白い杖~「100年目の盲学校」~』を第8回FNSドキュメンタリー大賞にノミネートし、特別賞を受賞した。

以後25年にわたって彼女を追い続けテレビ番組を制作してきた橋本真理子ディレクター(当時)は盲学校(教育基本法の改正で2009年以降法律上の区分は特別支援学校となった)に通う1人の全盲の少女の日々に密着。

彼女が自分の障害をどのように受け止めようとしているのかを描きながら、彼女が直面している障害児教育の問題点と本来あるべき姿を探ろうとした。

 

■「1日も早く自立したい」

 

盲学校当時のイーちゃんは自らの障害を受け止めて一日も早く自立したいと考えていたが、実はそれだけではなかった。

彼女の2つ下の弟の息吹くんが全盲で、かつ肢体不自由という重複障害を持って生まれたからだった。1人だけでも大変なのに障害者を2人も抱えるとなるとその親は絶望的ですらある。

イーちゃんは、看護婦として病院に勤める母親の和美が夜勤明けだろうが、毎朝早く起きて唯織ちゃんと息吹くんの2人の送り迎えに奔走する姿を肌で感じて、「早く1人で歩けるようになって弟の息吹の送り迎えをして母親を楽にさせてあげたい」と考えていた。

 

■父親も障がい者だった監督

 

橋本真理子監督は25年間取材を続けたことについて以下のように述べている。

「私の父も(生まれたのちの病気、事故などで障がいを得た)中途障がい者です。私が小学4年生の時、ステージ4の口腔がんを患った父は手術の末、歯を失い、舌を切除し、言語障がいとなりました。」

「話すことも、食べることも困難になった父は家にこもるようになり、『死にたい』と連呼するように。障がい者になったら人生終わるのか、隠れるようにして生きなければならないのか。」

「そうであるなら変えたい、生まれながらに障がいがあっても、人生半ばで障がい者になっても堂々と生きられる社会にしたい、と私は養護学校の教員免許を取得したうえでマスコミに入りました。」

「入退院を繰り返し、手術を乗り越える伊吹君と父が重なったのも事実です」。

 

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